容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7) (詳細)
東野 圭吾(著)
「映画化に先駆け文庫化」「こんなの純愛扱いしていいのかな」「これを機会に」「●数学って、実に面白い!!」「深い愛?=不快愛? 」
屍鬼 3 (3) (ジャンプコミックス) (詳細)
藤崎 竜(著), 小野 不由美(著)
「おもしろいですよ」
闇の子供たち (幻冬舎文庫) (詳細)
梁 石日(著)
「こどもの後ろ姿に、複雑な思い。」「めまいがするほどの衝撃作」「どうあがいてもこのプロットでは偽善臭を消せないと思う。」「えぐすぎる・・」「フィクションとは思えない生々しさ」
「現代エンタメの最高峰=超一流シェフの最高級料理」「文字通り“すべての東野作品を越えた”」「贅沢言ってもよかですか」「久々に最高レベルの面白さ」「おなじみ“白夜行シリーズ”最新作」
探偵ガリレオ (文春文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「凡作です。初めての東野圭吾には向きません。」「内容は安定したおもしろさ」「ドラマより面白い!」「理系の意見」「理系」
私たちは繁殖している 8 (8) (詳細)
内田 春菊(著)
「落ち着きました」「おもしろい体の話・復活」「もう「子育て漫画」は卒業」「子供ネタが多いです」
予知夢 (文春文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「「探偵ガリレオ」シリーズ第二弾」「真実を見通す力は超能力にあらず、論理的な考察力にあり」「オカルトとミステリーを上手に調和させた話」「東野作品の真骨頂」「東野先生が書けばこのクオリティは保証しますの指標」
目薬αで殺菌します (講談社ノベルス モF- 43) (詳細)
森 博嗣(著)
「盛り上がりを見せだしたGシリーズ」「森先生の作品が好きで買ってる人向けって感じ」「真賀田四季を巡る大河ドラマの様相」「百年?」「世俗」
そうか、もう君はいないのか (詳細)
城山三郎(著)
「「静かに行く者は健やかに行く 健やかに行く者は遠くまで行く」」「夫婦とは‥」「本書が湛える底光り」「奥様の存在」「タイトル上手。」
ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84) (詳細)
塩野 七生(著)
「新しい時代へGO!」「キリスト教が広まった理由についての考察」
● 眠れなくなる本
● 未来を拓くために
● りすとりすと
● ガリレオシリーズ
● 今、読みたい本
● 君の意見は完全に間違っているという点に目を瞑れば概ね正解だ
● アマゾンベスト1-50からの選りすぐり2008年8月15日
● 印象に残る近刊
● 注目のミステリー
● 心をえぐる小説
・「映画化に先駆け文庫化」
待望の文庫化ですね。単行本を持っているにもかかわらず、つい購入してしまいました。しかしそれも、これが名作だからでしょう。
東野圭吾さんの本は10冊以上読んできましたが、その中でもこの作品はとてもレベルが高いと思いました。
理系の天才二人による頭脳戦、とでも表現すればいいのでしょうか。とにかく石神という人物が印象的です。人によってそれぞれ全然違った、石神という人物の姿が浮かぶことでしょう。ですから、映画を見てしまうと、自分が読んでいて想像した石神のイメージと食い違う可能性が高いのです。
私も映画は非常に期待しています。決して映画を見ることを否定しているわけではありません。ですが確実に、映画を見た後にこの本を読むのはおすすめできません。映画と原作、両方これからという方は、原作を先に読むことを強くおすすめします。
それだけ、石神という人物は印象的です。
・「こんなの純愛扱いしていいのかな」
トリックの大胆さ・意外さという意味ではミステリとしてとてもよくできた作品ではあるけど、直木賞を受賞するほど文学的価値のある作品かと言われたら正直疑問を感じます。東野作品はかなりたくさん読んでいますが、他の作品同様、女性の心理描写が非常に類型的でキャラクターにも魅力を感じません。これほどの「献身」を捧げる相手が魅力的に描かれていないのはある意味致命的だと思います。「白夜行」では女性心理が書けないことを逆手にとって、女性主人公の内面を全く書かないという手法で成功していましたが、この作品ではそういうわけにも行かなかったので「女性が書けない」という彼の欠点が如実に表れてしまっているのではないでしょうか。トリックが素晴らしくても人間が書けていない作品が直木賞受賞というのは東野ファンの私にも納得できないですね。
この「献身」も純愛と考える人が多いようですが(作者がこれを純愛と思っているのかどうかはわかりませんが)、果たしてそうでしょうか。結果的に石神は靖子と美里に最初の事件以上の重荷を負わせたわけです。もし「身代わり」が成功したとしても靖子親子は一生良心の呵責と苦しみを背負わなければならなくなるということは予見できるのに、愛する人にそんな思いをさせるのが純愛なのでしょうか。石神のしたことは結局は自己満足的な自己犠牲でしかなかったと思います。ひとりよがりの愛情で相手を困らせることをする、それって正にストーカーと同じだと思うのですが…。靖子はそんなことをされても嬉しくもなければ幸せでもなかったでしょうに。そのために死ななきゃならなかった人の無念を考えるとそっちの方が泣けてきますね。
辛口で書きましたが、ミステリとしては一級品です。読んで損はありません。ただ直木賞を受賞すべき東野作品は「悪意」か「白夜行」だったのではないかと思います。
・「これを機会に」
東野圭吾は多作の作家で、青春ミステリでスタートを切って以来、社会派サスペンス、恋愛小説、メタフィクション、ユーモア小説などなど、幅広い作風で傑作を生み出してきた。直木賞、本格ミステリ大賞、このミステリーがすごい!第一位、週刊文春ミステリーベスト10第一位、本格ミステリ・ベスト10第一位、と数々の栄冠に輝いたこの作品は、これからもずっと彼の「代表作」として語られることになるだろう。
この小説は、完全犯罪を期する数学の天才石神に、物理学者湯川が挑む謎解きを軸とし、愛や友情など人間関係のドラマをからめた複合的なストーリーである。作者の実力が遺憾なく発揮され、それらの要素が全くばらつかず、一つに融けあっている。視点となる登場人物を入れ替えながら描写することで、謎が解かれるさまがわかりやすく、また登場人物の心情の揺れ動きなども明瞭になる。無駄なシーンはそぎ落とされ、次々と展開していくので、退屈することなくラストまで通読できる。
「代表作」と「最高傑作」が食い違う創作者は数知れない。確実に東野圭吾の「代表作」であるこの小説に、私は五つ星をつけるが、これを彼の「最高傑作」だと言う気はない。彼には他にも素晴らしい作品が多数ある。
存分な知名度を得たこの「代表作」に、「名探偵の掟」からの東野ファンである私が望むのは、これが彼の他の傑作群を世に知らしめるきっかけとなってくれることだ。東野圭吾作品をこれで初めて読むという人には、読後、他の作品にも手を伸ばしてみてほしい。もっとサスペンスを楽しみたい人なら「天空の蜂」、愛する人の為の犯罪が描かれる作品ならば「白夜行」、この作品が重すぎると感じる人には「怪笑小説」や「「あの頃ぼくらはアホでした」、といったように。
「代表作」を読んだだけで終わることなく、多くの人が他の東野作品を読み、自分なりの「最高傑作」を見つけてくれることを、一ファンとして祈ってやまない。
・「●数学って、実に面白い!!」
事前に『数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!』を読んでいたためか、文系出身の私でも、かなり楽しく読めました。数学的思考力によって「サキヨミ」ができる能力があると知っていると、天才数学者・石神の思考過程や行動が非常にリアリティーをもって感じることができました!
数学って、こんなにもスリリングでサスペンスな実用的な思考の訓練を学べる、超実用的なものだったのですね!私の人生は、これまで損をしていたように感じました。
理系のかたが書く本って、実にわかりやすくていいですね。ワクワクしながら読めました。これなら映画のほうも期待大です!
・「深い愛?=不快愛? 」
まず読みやすさと、構成の上手さに脱帽します。さすが東野圭吾さんと。しかし、帯にある『これほどまでに深い愛情云々……』は正直納得いかない。このどこが深い愛だろうか?
まず石神が娘がいる隣人に一目惚れしただけで、ここまでの一生棒に振るような鉄壁アリバイを組み立てるかな?それに靖子に惚れる理由が薄いっていうかない。どこが良いのだろうか?惚れる理由は?もしこのような設定で書くなら長編で、二人の間柄をもっと描いてからが前提じゃないかな?あと靖子の対応もおかしい。他人にしかも隣人にすべて任せるか?(笑)なんか常識ないっていうか……。すべてプロットの上で操られている感が否めない。
最後の結末も予想通りだし……。あんな結末にしたからって涙は出ませんよ。でも完成度は高いと思います。
・「おもしろいですよ」
相も変わらず上手な絵!あとがきのタイトルが断崖絶壁に戻ってると思ったら、あのタイトルは何だ?
・「こどもの後ろ姿に、複雑な思い。」
「これは小説なんだ…」何度もそう思いながら読み進めました。
この小説はタイを舞台に幼児が売春宿に売り飛ばされ、挙げ句生きたまま臓器売買されるというショッキングな内容と並行して、それを阻止しようとする現地NPO団体の苦悩を描いたものです。 あまりにも後味の悪い結末とともに途中何度も憤怒の涙を流した私は、気になって他の方(有名無名を問わず)のレビューも読んでみました。 大体が「取材不足」や「リアリティ不足」などとありましたが、ルポルタージュではないにしろ、ここまで肉迫した文章を小説として世に出した梁 石日氏に私は拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。
なぜなら、フィクション、ノンフィクションの違いはあれど、火のないところに煙は立たないのです。 取材不足といわれる所以となった現実味に乏しいと言われる文脈も、あえて『小説』という仮面をかぶせたら普段問題意識のない市井の人にも提起できると感じたからです。 それは普段平和の中に身を委ねた私自身が、作中涙も枯れ果てたこども達に魂を重ね合わせられた瞬間だったからです。
・「めまいがするほどの衝撃作」
本書を読むということは、まるで自分の中に潜む悪魔と向き合うことのようでもあり、手に取るまでにも相当の勇気が要った。人間はここまで残酷になれるものなのか?野獣以下の描写の嵐には悪夢にうなされるほどだった。私達があまりにも無知だったこと、メディアが機能していないこと、全てが狂い出していること・・その闇の深さに今、気の遠くなるような息苦しさを感じている。何も知らずに、知ろうとせずに、海外の繁華街で、チャラチャラとお金をバラ撒いていたかつての自分が恥ずかしい。まずは「知ること」から最初の一歩が踏み出せると信じて、今後もこの問題に関心を持っていきたい。
・「どうあがいてもこのプロットでは偽善臭を消せないと思う。」
前半のタイでの人身売買・売春の実態の凄まじいばかりの描写は著者の真骨頂ともいうべきもの。
貧困がひと一人の命の価値を限りなく軽くする。
ただ後半の展開は微妙。犠牲になる子供を救おうとする主人公の日本人NGO職員の葛藤。
根底の原因が貧困である以上、NGO活動の対症療法が問題の根治には繋がらないという著者・読者の共通認識があるからどうリアリティを出そうとしても偽善臭が消せない、と思うのはあまりにもうがった見方でしょうか。
一人や二人の子供を救ったところでどうなる、というメッセージは本書でも繰り返し発せられていますが、わたしは中途半端な希望を見出すような展開は不要、興醒めであると思いました。
・「えぐすぎる・・」
限りなくフィクションです。
タイやベトナムなどで今も行われてる人身売買・・
人は自分の環境と全く違う物は意識して見ないようにしたいです。
「闇の子供たち」を単純に小説としてアラ探しするような事は違うと思う。
よくぞここまでリアルに生々しく書いてくれたものだ・・これぐらいインパクト与えないと 僕ら平和な日本にいてる人間は理解できん
ペドファイル(小児性愛者)
全員死ねーーーーーー!!!!
・「フィクションとは思えない生々しさ」
タイの少女買春、臓器売買を扱った作品。7〜9歳かそこらで売られ、そのまま売春窟で働くことになった少年少女の悲劇、彼らを救おうとするボランティア団体の奔走、臓器売買シンジケートの内情を描く。親に売られ、売春させられたうえ、ティーンエイジャーになる前に臓器売買のシンジケートに再び売り渡されるという悪夢のようなエピソードや、エイズを発症しスモーキーマウンテンのようなゴミの山に捨てられる少女の話しが出てくる。フィクションだが、ドキュメンタリーのような生々しさがあり、読んでいるうちにほんとうにあったことと錯覚しそうになる。背筋の凍るような話しで、結末もやるせない。
●流星の絆
・「現代エンタメの最高峰=超一流シェフの最高級料理」
「現代エンタメの最高峰」という帯の言葉にあながち嘘はないと思います。見事にからみあった伏線。いきもつかせぬストーリー。 100頁を過ぎるあたりからは、ぐんぐん加速する感じでいつのまにか物語の虜になっていました。キーパーソン三人の性格設定や書き分けも見事です。間違いなくドラマ化でしょうね。翌週が待ち遠しくてたまらない、高視聴率間違いなしの、話題作になると思います。 ただし残念なのは、やはり、良くも悪しくも「エンタメの最高峰」になってしまっているということです。ストーリーが面白すぎて、人間の深みや痛み、業のようなものを感じる「淀み」が感じられないのです。『白夜行』『手紙』や『秘密』などにはそれを感じられただけにそれだけが残念です。ないものねだりかもしれません。贅沢なお願いですね……。 この作品は、いわば、超一流のシェフが見事に作り上げた料理といった感じでした。美しくて工夫に満ちていて、きちんと王道を行っています。もちろん抜群の美味しさです。けれど、不器用なりに、懸命に作った家庭料理というのも、小説の魅力のひとつなのだと思います。 しかし、そんな「ないものねだり」は、星一つ減じるほどのことではありません。最高級の楽しみを堪能できました。五つ星です。
・「文字通り“すべての東野作品を越えた”」
刊行されてすぐに購入し、ほぼ徹夜して二日で読み切った。それほどほんとに息をもつかせぬ展開で、東野作品ならではアッという間です。
とにかくラスト。まじで涙が出ます。
僕は「秘密」「容疑者Xの献身」より遙かに感動した。
三兄妹の「絆」、必見です。
・「贅沢言ってもよかですか」
面白かったです。最後まで一気に読めたし後半はドキドキもしたし、結末には「うん!そうか!」と思わずうなってしまいました。でも、「お〜そうきたか!」と叫んで立ち上がるほどの驚きはなかったです。
偉そうに言わせていただくと、東野さんの力量はこんなもんじゃないと思います。もっと深く、頭グチャグチャになるようなエグ味のある小説を書いていただきたい。本の世界に引きずり込まれて、息つかせぬほどハラハラするような…白夜行なんて本当に読破するまで眠れなかったですから。いつも素晴らしい作品を読ませてくれるから、やはり読者の求めるものもどんどん贅沢になっていってるのかもしれませんね笑。
・わりとあっさり読めるミステリー作品を探してる・家族の絆に触れたい・読後は気持ちよくぐっすり寝たい方にはオススメです。「赤い指」の家族と比べてみるのも楽しいですよ。私はあっちの家族も好きですが。
・「久々に最高レベルの面白さ」
個人差はあると思うが、ここ最近の東野作品に少しもの足りなさを感じていたのだが、これはいい!相変わらず文章が上手いのでスラスラと読んでしまい止まらなくなる。そして登場人物達の感情の描写が、、、(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)とてもせつなくて胸が締め付けられました。「白夜行」「秘密」に並ぶ傑作だと思います。
・「おなじみ“白夜行シリーズ”最新作」
相変わらず退屈させない。まあ読んでて安心というか。そしてそれなりに魅力ある主人公たち。たしかにぐいぐい読ませる。でも、なんとなく、「いつものを読んだ」という気がしてしかたない。なんというか、毎度おなじみ「圭吾業」のような。
この作品、そして少し前の「夜明けの街で」、「白夜行」。
10数年前の事件に巻き込まれた少年少女が、トラウマで心がゆがみ、それが現代の事件につながり、やがて悲劇が・・・
上のどの話にもこのあらすじが当てはまるんである。
なんだか「白夜行」の劣化コピーのようだ。もちろんストーリーもちがうし、登場人物の設定も、真相もまるでちがうんだが、なんとなく前と同じものを読んだような、同じ読後感・・・。
同じ10数年の物語でも「白夜行」で描かれた年月の重みと業の深さは、作者の計算すら超えたところで生まれたような気がした。
本当はどうなのか分からないが、東野圭吾はいまだにそんな「白夜行」の重さをもてあましてるんだろうか。だから裏「白夜行」みたいな「幻夜」を書き、それでも足りなくて、限りなく同じ匂いのするものを書くんだろうか。
たしかに「白夜行」よりも、この作品の方が巧みに書かれているところもたくさんあるし、長さもそれなりに短くなってるし、読みやすいというならこちらの方だろう。
でもすべて性格から気持ちまでいちいち説明し尽くされる登場人物たち、なんだか作為が見えてしまうストーリー、泣かせの場面、真相、そしてラスト。どれにも薄さを感じてしまう。
これからも、この“シリーズ”は続くんだろうか。
・「凡作です。初めての東野圭吾には向きません。」
東野圭吾の作品はいくつも映像化されていますが、成功した作品とそうでない作品には法則があるように思えます。
それは「原作が傑作の場合は映像化が失敗し、凡作である場合は成功する」という法則です。
その法則を信じていた私は探偵ガリレオが映像化されると知って成功を確信しました。そしてその通りになりました。
凡作であるがゆえに原作にも熱烈なファンはほとんど居ません。だから映像制作者はある程度好き勝手に作品をいじる事が出来て、ファンもそれを受け入れられるから成功したのでしょう。
というわけでドラマを見て面白いと思ったからといって原作「探偵ガリレオ」「予知夢」に手を出すことはオススメしません。東野圭吾にはもっと面白い作品がいっぱいあります。
男性なら「秘密」をドラマ版を見ていないなら「白夜行」をミステリーが好きなら「ある閉ざされた雪の山荘で」を笑える気軽な作品を読みたいなら「超・殺人事件」を上記の作品を読む気がしないなら「悪意」を
「探偵ガリレオ」の前に読むことをオススメします。読書後により一層東野圭吾が書いた「探偵ガリレオ」を読みたくなることを保証します。
・「内容は安定したおもしろさ」
『内容』話は全部で5つ。「燃える」突然、頭が燃えて死亡した青年。「転写る」デスマスクが導く事件の真相。「壊死る」心臓だけ腐ったような変死体。「爆ぜる」突然、海で大爆発した女性。「離脱る」見えるはずのない景色を見た少年。…どれも奇妙な事件で、毎回頭を悩ませるのが草薙刑事。その草薙の親友で、草薙から事件の相談を受けて、科学的に事件を解決へと導くのが湯川助教授。話の内容も含めて、草薙と湯川の絶妙なコンビも、この物語を形作っています。
『実際に読んでみて』内容は全て科学で解決します。事件のタネは、聞いたことのないような器具や現象ばかり。いまいちピンと来ない人もいるでしょうね。私の場合、「へぇ〜、こんなことがあるんだ…」という感じで読んでいきました。元々理科は好きでしたから、そういう人にとっては良い内容です。
『その他』続編の「予知夢」は、「夢想る・霊視る・騒霊ぐ・絞殺る・予知る」の全5話。以前放送されたTVドラマの「ガリレオ」は、原作である探偵ガリレオと予知夢の話を、全て取り入れて作られました。ドラマと原作を比べると、微妙な変更があります。08年10月4日公開、ガリレオの劇場版は「容疑者Xの献身」が元。同じ日に放送されるスペシャルドラマ「ガリレオ・エピソードゼロ」もありますよ。
『小ネタ』天才物理学者の湯川学。原作のモデルは俳優の佐野史郎さんのようです。一方、ドラマは福山雅治さんなので、イメージがかなり違いますね。
参考なれば嬉しいです。
・「ドラマより面白い!」
ドラマが面白かったので、読んでみました。ドラマとはまたイメージが違うんですね。ドラマだと理系的な会話が雰囲気だけで物足りないです・・・でも、ついて行けない人がかなり出そうだし。ドラマで面白いと思った人は、一度読んでみて欲しいです。本のほうがずっと深みがあります。
・「理系の意見」
頭を使わずに読むなら非常に読みやすいと思います。主人公2人の掛け合いも絶妙で、互いの個性がうまく表現されていて面白いです。しかし、トリックが子供だましというか、ずいぶん都合のいい話だなあと思うのは私が理系だからでしょうか。殺人およびその隠蔽の手段として用いるにはどれも不確実すぎるように思います。トリックの検証実験も、天才科学者とはとても思えないくらいにいい加減で、もうちょっと説得力が欲しかったです。
・「理系」
実は、このシリーズの最新作“容疑者Xの献身”を読んで湯川教授ファンになり、この1作目を読みました。天才的物理学者の湯川教授と警視庁捜査一課長の草薙は、大学の同級生である。草薙は、捜査に煮詰まると湯川のところを訪れる。そして、湯川の物理的発想を元に事件を解決していく。事件自体が、突然燃え上がった少年の頭や心臓だけ腐った男の死体など、衝撃的でまったく普通の考えでは分からないものが取り上げてある。解決していく過程での物理的発想は、ものを違う方向から見せてくれて、まったく物理の知識のない人も楽しめると思います。作者の経歴を見ると納得だが、理系と文系のコラボレイションですね。
・「落ち着きました」
4巻から始まった、元義理の両親への悪口の集中砲火が、本巻では無くなりました。
皆無というわけではありませんが、本シリーズには元々世間への不満への愚痴は書かれていましたし、その程度のことに落ち着いています。
また、他の作品で書いた愚痴はできるだけ重複して書かないように配慮したそうで、4巻〜7巻の流れにがっかりしていたファンの声に耳を傾けた内容になっています。
ただ1〜3巻のノリが戻ったかというと、それも違います。 初めての育児への新鮮な驚きを独自の視点で書いた面白さは、お子さんが成長された為もうありません。
成長したお子さんの育児の様子の描写には、春菊さん流の前衛的な面白さは残念ながらありません。普通のお母さんの視点。
春菊さん流と言える描写もありますが、それも育児がらみものでは少ないです。
出産・子育てを繁殖と表現した、あの感性は今回は作品にあまり反映されていません。
独自の視点と感性からの描写は減ってしまい残念ですが、普通の育児漫画として十分に楽しむことができました。
・「おもしろい体の話・復活」
ディーバカップ、プロスタグランディン、手根管症候群など、マニアックなだけに面白い「体の話」が復活し「私繁」らしさを取り戻しています。息子2ちゃんの可愛らしさにも和みます。人間関係はいろいろ複雑なようですが、更年期も大変なようですが、これからも魅力ある春菊さんを見せてもらいたいな、と思います。
・「もう「子育て漫画」は卒業」
私が妊娠中に、興味深く読み始めた「わたはん」も、8巻までくると新鮮味はありません。ほぼ「自分自慢」「子供自慢」の内容に、「(現在の)夫自慢」もプラスされていましたが、8巻の後半では、とうとうユーヤさんに飽きてしまった様子です。今まで同様「大好き」「素晴らしい人」「みんなが振り返るほどいい男」から「嫉妬深くてイヤな男」「妻の留守中、家に女を引っ張り込む男」と散々な言われようです。そして、春菊さんも今までと同じく「私は正しい」「私は頭が良くて人に好かれる」「私は金持ち」「私は何も悪くない」というスタンスを死守しています。もし9巻が出版されるのなら、「新しいつれあいの紹介「5人目の誕生」の内容になるのでしょうか。
・「子供ネタが多いです」
いつぞやのように愚痴や身内間の確執はほとんど書かれてなくて、お子さんの合宿の事やご自分のお仕事場にお子さんを連れてった時の話、家族で行く海外旅行での食事や洗濯について等、参考になったり微笑ましい話が多くて読みやすかったです。あと、ご友人であられる故・レピッシュ上田現さんのお話しも少し載ってます。最後にユウヤさんとの別居に至った原因みたいなのが描かれてました。今までの作品通り、「私は何も悪いことしてないのに」というスタンスで描かれてます(と私は感じました)。でも最後にほんの少し描かれているだけなので、そういうのが嫌いな方でも概ねさらりと読み終える事が出来るのではないでしょうか。
・「「探偵ガリレオ」シリーズ第二弾」
起こりえない難事件のトリックを物理学的なアプローチでときあかすという物理学者・湯川助教授が主人公の「探偵ガリレオ」シリーズ第二弾。作品の構成上は、「種明かし」に重きを置いているようなのですが、私にとっては、それ以外の部分が面白かった。種明かしについては、「ホホー」と唸らされるという感じはあまりなかった。
・「真実を見通す力は超能力にあらず、論理的な考察力にあり」
『ガリレオ探偵』の続編。超常現象とも思える奇妙な事件を、刑事の友人である物理学者が論理的に解決する推理小説。一話が50ページ前後の短編で構成される。本書の特徴は、一見単純な事件のウラに潜む真実を見逃すな、ということのよう。
人の世に起こる不思議なことは単純な事象の積み重ねであることが多く、複合的に考えると理解困難なことが多い。しかし、理解困難なことに対してあっさりと思考をあきらめてしまうと、真実を見通すことができなくなってしまう。そのような思考停止をした者の逃げ道がオカルトである。予知夢が確率論で語れる点についての具体的な考証は本書でも紹介されているが、『誰かのことを考えた5分以内にその人が死ぬ(虫の知らせ)』という偶然は1年間で日本だけでも数千件は起こっているし、ユリ・ゲラーの壊れた時計を直す超能力のトリックも確率論で簡単に暴かれたことは有名である。思考の短絡化は、稚拙なコールドリーディングを背後霊の言葉と信じ込んでしまったり、エスカレートするとテロと無関係な国への戦争を神の名の下に正当化したりする。
本書が前作と比較して進化している点は、短絡的思考の矛先を不思議現象のみに向けただけではなく、たとえ不審な点があってもそれを無視し、事件そのものを単純視して片付けようとする安易な姿勢に対しても向けている点である。警察の捜査やマスコミ報道には、最初から事件の犯人を決めつけたような行動がしばしば見られるが、もちろんその通りであることもあるにせよ、事実をひとつずつ積み重ねて真実を導く姿勢が重要である。
著者のメッセージは『思考停止するな』だ。各話には伏線が多めにちりばめられていて、読んでる間になんとなく結末が見えることも多いが、それでも十分楽しめたし、あっという間に読み終えた。本書に対して低い評価をする者は、予知夢などを否定されて不満に思うような読者のような気がする。中学生以上であれば十分読める内容であり、若い者には是非勧めたいし、本書をきっかけに、安斎育郎氏や菊池聡氏の教養書に発展してほしいと感じる。個人的には、各話とも種明かし前にトリックがほぼわかってしまったので星4つまでの評価。
・「オカルトとミステリーを上手に調和させた話」
予知夢、幽霊、ポルターガイスト…超常現象を扱う雑誌ではよく見かける言葉。この作品を見るまで、オカルトを否定する存在がミステリーだと思っていました。
草薙刑事が出会う事件は、みなオカルト…現実では理解できないものばかりです。それらを物理学者・湯川の視点から見ると、きわめて現実的な話が浮き上がってくる。
昔から「視点を変えてみれば…」と言うけれど、その観点を上手に利用している作品だと思いました。
予知夢とか、ポルターガイストとか…そういった非現実的な事件の裏側には、浮気とか、相続狙いとか…きわめて人間臭い現実的な真実が隠れていてます。その両極端な対比構造に親近感を覚えるとともに、人間であることの寂しさのようなものも感じました。
うまく言葉では表現できませんが、何となく得した気分になれる推理小説です。
・「東野作品の真骨頂」
数々の難事件を物理学者の湯川が解決していきます。 東野さんの作品はやはりこのようなミステリーものが一番です。 ついつい物語の中に引き込まれていきます。 このようなトリックを次々と考え付く東野さんはすごいです。
・「東野先生が書けばこのクオリティは保証しますの指標」
短編集なのもあるだろうが、東野先生の展開力ならどの作品を読んでもそれなりに楽しめると思う。これもその1つ。
・「盛り上がりを見せだしたGシリーズ」
Xシリーズを間におき、久々に出版されたGシリーズ。このシリーズ、当初は事件もいまいちで多少盛り上がりに欠ける印象がありましたが、ここに来て俄然おもしろくなってきたような気がします。といっても1つ1つの事件、ミステリーとしては、今までどおり、ぱっとしないのですが、これまであった、どこまでついていけばいいのか?というような退屈な疑問はかなり解消されて、話の行方が気になりだしました。森氏の術中にはまって少々くやしいような気もしますが、とにかく今までの印象が良い意味で、だいぶ変わったのは事実です。
・「森先生の作品が好きで買ってる人向けって感じ」
私は処女作「全てがFになる」から読んでいるのでこの評価です。
作中世界のリンクが様々なシリーズに貼られているため、最初にこれを見ても何がなんだか分からないと思います。派手な事件が起こるわけでも目を張るようなトリックがあるわけでもないので。
ただ、連続して読んでいると、作品間のつながりがドンドン濃くなっていき、続きを早く読みたいという気分になります。
ハマると怖い一冊ですね。
・「真賀田四季を巡る大河ドラマの様相」
Gシリーズ7作目は、毒物混入事件です。しかし、特にトリックがある訳でもなく、事件の詳細が語られる訳でもありません。Gシリーズの根底に見え隠れする真賀田四季の陰。ヒトをモデルにした壮大な実験そして新人類の創造。西之園萌絵はいいます。「なるべくかかわらない方がよい」と。それでも、事件を追求し続ける赤柳初朗とはなにものか?また、海月及介も謎めいています.いよい佳境に入るGシリーズ!次回が楽しみです.(1年以上先だそうですか・・・)
・「百年?」
少しずつ夜が明けるように、全体像が見えてくる、かも。それは凄くゆっくりとした時間かも知れませんが。て、いうか久方振りの「Gシリーズ」。物語はそれなりに進みます(急展開?)。
・「世俗」
とても落ち着いた作品だと思います。森作品はすべて読んでいますが、文章が美しい。このシリーズでは、鋭利という言葉は当てはまりませんが、鈍いながらも真理がある様な感じです。 この一作だけでも、読み応えはあると思いますが、伏線の中の一つに過ぎないのです。これからの続編が楽しみなのですが、その反面怖いという感情もある、そんな複雑さのある感覚です。 もし、迷っているとしたら、最初にこの作品を読む事はお勧めはしません。出来ればS&Mシリーズから読む事をお勧めします。
・「「静かに行く者は健やかに行く 健やかに行く者は遠くまで行く」」
「五十億の中でただ一人『おい』と呼べる妻へ」の愛惜の回想記、ラブストーリーです。二人は「喧嘩らしい喧嘩をした覚えがない」(87ページ)そうです。
・「夫婦とは‥」
「夫婦」の片方がこの世からいなくなったとき。残された人間にとって、自分の半身をもぎとられたも同じこと。その喪失感は、しかし、この奥様がいたからこそ、「城山三郎」が誕生し、多くの仕事を成し遂げた。この奥様がいなかったら、「城山三郎」は存在しなかったと思う。まさしく、それが真に実感できる本。亡くなった奥様との出会いから別れを、かなりノスタルジックに描くことで、城山さんの心が「奥様がもういない」ことを何とか納得させようとしてるようで、読んでる私も辛かった。もうすぐバレンタインデーですが、相手にこの本も一緒にプレゼントするのもいいかもしれない。
・「本書が湛える底光り」
休日に2時間程度で読みおえた。最後は泣いてしまって困りながら。
この本は二部構成である。第一部は 城山三郎が書いた 奥様との出会いと死別であり 第二部は 城山三郎の娘さんが書いた 城山三郎の死だ。
第一部を読んでいて 強く思い出したのは アラーキーの写真集「センチメンタルな旅、冬の旅」である。アラーキーの写真集は 奥様の陽子さんとの新婚旅行と 陽子さんの癌との闘病と其の死を扱った作品だ。 その写真集と この「そうか もう君はいないのか」は 驚くほど似ている。アラーキーの白黒の写真集が小説のようでもあるし 一方 城山が極めて抑制した文章で書き上げた本書が白黒の写真集のようでもあるのかもしれない。
泣いてしまったのは 第二部の娘さんの井上紀子さんが書かれた部分だ。ここで見えてくる城山三郎は 彼自身が描いた淡々とした男ではない。最愛の妻を亡くして嗚咽しつづけた夫である。 そんな第二部を読んだ上で 改めて 第一部を読んでみると 淡々とした文章の底にかすかに見える激情が浮かび上がってくるかのような思いがする。 この二部の構成が 本書を比類の無い作品に仕上げている。
死を哀しむのは 動物でも人間だけなのかもしれない。そんな「哀しみ」は時として耐えがたく その人を滅ぼしてしまうこともあろう。但し そんな「哀しみ」という感情を得たことで 僕らだけが感じうるものもあるのではないかと思う。本書が湛える一種の「底光り」は そんな「哀しみ」を感じうるものだけにしか見えないのではないか。 そんな事も思いながら 読了した。
・「奥様の存在」
読んでいくうち、奥様はこの城山三郎さんになくてはならない存在だったということがよくわかった。天真爛漫で、お茶目な奥様はきっと素敵で、チャーミングな人だったのだろう。読んでいくうち、江藤淳さんの「妻と私」を思い出した。男性にとって妻とはこんなに大きな支えであるのか、と思った。自分はどうなのか?夫を支えているのだろうか。失ったものが大きければ喪失感も果てしない。残された者はどう生きていけばよいのか、考えさせられる一冊だった。
・「タイトル上手。」
「もう、きみには頼まない」「粗にして野だが卑ではない」「わしの眼は十年先が見える」など口語的タイトルをつけるのが上手い作者(「毎日が日曜日」「官僚たちの夏」「男子の本懐」なんて路線も上手いけど)、そのタイトルは主人公が口にするセリフであることが多いわけですが、今回の遺作は作者自身がつぶやいた言葉。この言葉はいつ出てくるのかなと思って読み進んでいたら……軽く胸にきました。タイトルも上手いが、私小説的な手際も上手い。きわめてストイックな文体と、吐露される心情の熱さが絶妙で2時間もあれば読みきれますが、読後感は重く、かつ爽やか。巻末のお嬢さんのエッセイもあますところなく城山三郎の「余生」を伝えて、城山文学をきっちり完結させてます。
●ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84)
・「新しい時代へGO!」
文庫本化された後も、作者塩野七生は一冊ずつ、表紙になった「皇帝コイン」の解説を丁寧に書いていてくれるので、嬉しい限りである。
本書はこのシリーズの中でも終末期に入ったローマ帝国の、極めてユニークな記述内容の巻となっている。著者塩野七生の薀蓄溢れる意見部分とか、キリスト教に対する先学に加えての自分の考えの吐露とか、作者の考え方が大いに反映されている部分が多い。
本シリーズが、日本の多数の読者に読まれ、人気があり、経営者等々のリーダーにも多くの愛読者がいるのは、古代ローマ帝国の各皇帝の言動ないしは行動等に今日でも見るべきところがあり、日常の意思決定等々にも生かすことができるケースがあると考えるからである。
そういう意見もあるらしい。
塩野はこんなことを言っている。「人間世界では、なぜか、権威失墜の後に訪れるのは、残された者同士の団結ではなく、分裂である場合が圧倒的に多い。」 嘗てのチトー亡き後の、ユーゴスラビアの分裂国家群の内紛然り。
また、「同性として毎度のことながら残念に思うのだが、女とは権力を手中にするやいなや、超えてはならない一線を越えてしまうのである。しかもそれを、相手の苦境につけこむやり方で行う。」と。 然り。見に覚えのある女性も多々あるのでは・・・・・。
本書の最後にまるまる1章をさいて書かれた「ローマ帝国とキリスト教」は圧巻である。この章はキリスト教に対する塩野の総括であり、この宗教に対する彼女の明確な意思表明といっていい。 そして、作者も含め、我々のようなキリスト教信者でない読者にとっては最高の、且つお手軽な「古代キリスト教入門」となっている。 痛くて痛くて痛そうな「割礼」もきちんと書いていてくれているのは興味深い。
それにしても、塩野がキリストのいわゆる「奇跡」なるものには全く信じていない、という件の部分には、何故か安心したりしてほっとするのだ。 逆に、だから「彼女の文章は信用できる、読者を納得させる」といえるのかもしれない。 また、文庫本につきものの第三者による「解説」が本文庫シリーズには一切ないのがいい。 塩野自身、この一連の著作に自信があり、他者の解説を望まない、他人に批判されたくないという心境なのだらう。
・「キリスト教が広まった理由についての考察」
今年に刊行された文庫版の「ローマ人の物語」はこれで最後です。 この巻では、3世紀の軍人皇帝が次々とたっては、身内や部下に殺されていく時代が描かれていました。共和制になって依頼ずっとローマをひっぱってくる人材を輩出し続けて来た元老院が実験を失い、軍人とくに騎兵の隊長が皇帝になるよようになってからは(というよりはそうするしかなくなるくらいパックス・ロマーナが崩れていって)、ローマ帝国内は常に不穏で落ち着きがなく人々の幸せも相対的に低くなっていきます。 この巻で興味深かったのは、そうしたローマ帝国内で数百年かけてキリスト教が勢力を拡大していった過程についての考察です。ユダヤ教から分派したキリスト教がどのようにして公認宗教として認められて行くのか、その背後にあったものはなんだったのか。これが面白かったです。塩野さんは、キリスト教が特にすぐれていたわけではなく、ローマの没落がキリスト教に人を傾かせていったのだという主張は頷ける部分が多くありました。 曰く、ローマ市民というものに誰でもなれるようなったことで帰属感をもてるコミュニティに人々が流れた。昔は行き届いていた福祉が滞りがちになり、病人や子供でも寡婦でも助け合いで暮らして行けるキリスト教コミュニティに流れた。世相が厳しくなってきて、確かなもの、あいまいな多神教ではなく絶対の力を説くキリスト教に人が流れた。同様に、現世主義だったローマなのに現世が幸せでない人が多くなり、死後の幸福を説くキリスト教に人が流れた。などなど。 またキリスト教のほうでも、ユダヤ教の偶像崇拝禁止から舵をとり、キリストの画像などを認めるようになった事、ユダヤ教と違って軍人や高官になることを認めるなどで、ユダヤ教と違ってローマ人がじわじわと入り込みやい状況にしていたことなどが挙げられていましたが、おおもとのところでは国がゆるやかに崩れていって、国土の防衛もインフラの整備も手に余るようになり、為政者が数年ごとにいれかわり、食料の配給にも問題があるようになり、人々が力強い言葉を発し他と一線を画する強い主張をする一方で互助会的なコミュニティで共同体としてうまくやっていたキリスト教に流れて行ったという事で、そのあたりで積年の疑問が氷解しました。 「ローマ人の物語」 かつてのような英雄や優れた指導者(まれに暗君・暴君もいましたが)の時代は終わりを告げ、部下や軍人同士のいざこざで首がすげかえられる時代になってきて、国家としての魅力はなくなってきましたが、人間の物語として読むとまだまだ面白いし、知的好奇心が満たされる本です。
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