大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」 (講談社プラスアルファ新書) (詳細)
池上 彰(著)
「宗教本デビューにお薦め」「なんといってもわかりやすい週刊こどもニュースのお父さん」「イチから理解する」「中東地域の紛争の根源を理解するのに最適」「誰でもわかる」
日本人のためのイスラム原論 (詳細)
小室 直樹(著)
「他の宗教との比較から見えてくる壮大な世界観」「知識は最高の名誉である」「他宗教との比較から見えてくる世界」「イスラムを分からせる本」「日本人の空白を埋める、劇的イスラム解説書」
イスラーム世界の論じ方 (詳細)
池内 恵(著)
「知ることに伴う義務?」
イスラーム世界のことばと文化 (世界のことばと文化シリーズ) (詳細)
佐藤 次高(著), 岡田 恵美子(著)
イスラエル人とは何か―ユダヤ人を含む超える真実 (詳細)
ドナ ローゼンタール(著), Donna Rosenthal(原著), 井上 廣美(翻訳)
実は見かけない、アラブの大富豪 (ヴィレッジブックス新書) (詳細)
トニー 高橋(著)
「もっと中東を知ろう、見てみよう。」「アラブ商人の現実」
恋するアラブ人 (詳細)
師岡 カリーマ・エルサムニー(著)
「著者が綴る日本語のしなやかな美しさに酔うことが出来た珠玉のエッセイ集」「惚れました。。。」
イスラーム (ネコ・パブリッシングDKブックシリーズ) (詳細)
ポール ランディ(著), 小杉 泰(著)
「イスラームがよくわかる!」「本当にこの値段でこの内容?!とびっくり」
世界石油戦争―燃えあがる歴史のパイプライン (詳細)
広瀬 隆(著)
「索引が無いのがいかにも残念」「一方的な言い分」「本書を読まずして中東問題を語るなかれ」「読みにくいが値段は安い!!」「広瀬隆氏のライフワーク」
インドネシア 展開するイスラーム (南山大学学術叢書) (詳細)
小林 寧子(著)
●大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」 (講談社プラスアルファ新書)
・「宗教本デビューにお薦め」
イスラム教単独ではなく、関係の深いユダヤ教やキリスト教、そして神道や仏教まで関連づけて語られており、ほんと勉強になりました。特にイスラム教は無知に起因する(負の)誤解が多く、目から鱗が落ちると共に、自分の無知さ加減に、相当反省させられました。この本を読んでから、各宗教についてより深く掘り下げた本を読むとより勉強になると思います。宗教本デビューにぴったしでした。
・「なんといってもわかりやすい週刊こどもニュースのお父さん」
湾岸戦争、同時多発テロ、そして泥沼の中東問題。これらの大事件には、いずれもイスラム教が中心的に絡んでいる。しかし、細切れのTVニュースでは、いつまでたってもわかったようなわからんような。そんな隔靴掻痒をいっぺんに吹き飛ばしてくれるのがこの本。イスラム教がわかるようになれば、どうじにキリスト教、ユダヤ教も理解できてしまった。
・「イチから理解する」
学生時代、宗教論、文化論などの授業を受けていたにも関わらず、未だにイスラム世界の知識が甘い私。(イスラエル辺りのニュース、未だ理解できず)
この本は一つ一つ、宗教、文化、歴史などわかりやすく説明されております。おばかな私も、ガッチリ理解。さすが“子どももわかる”と謳っているだけありますわな。
・「中東地域の紛争の根源を理解するのに最適」
国際紛争の焦点となっている中東イスラム世界について、その歴史と最近の情勢までわかりやすく解説してある。現在、中東で毎日のように勃発しているテロとそれに対する報復の根の深さが理解できる。これを仲裁しようとする国際社会にも、複雑な利権関係や思惑が絡んで、とりわけ、米国とその支援国はテロ攻撃の対象となっている。しかし、その治安は混沌とし、国際高等弁務官事務所までテロ攻撃に巻き込まれている。日本も自衛隊派遣の問題で、この紛争に直接的に関わる事態が十分に想定される最中、今一度、その歴史的流れについて頭を整理するのに最適な本である。
・「誰でもわかる」
この1冊で中東問題まるわかりです。おすすめです。
・「他の宗教との比較から見えてくる壮大な世界観」
小室さんというのは、複雑な人だと感じます。彼の経済学者としての華麗な経歴(それもミシガン、ハーバードや京都大学理学部の経歴)や本格的な論文を読んだことがあれば、数学や統計学に熟知した極めて正統的な「科学者」だということは、わかるはずです。たしかに社会科学の抽象化作業は、素人目には、きわめて理解しがたいです。
しかしそれにしても、なぜ、これほどまでに誤解を受けやすいおおざっぱな文章で、僕たちに語りかけているのか?。
厳密的な定義で文章を構成して、しかるべき場所へ公表すれば、簡単には批判を受けがたい超一流の社会科学者なはずなのにです。僕は、小室さんが学問のタコツボのなかで戯れるのではなく、よりたくさんの人に「わかりやすく社会科学の成果」を理解してほしいから、こうした「原論」のシリーズをかいているのではないか、と思っています。
そういう視点で見ると、彼のおおざっぱな文体は、世間に概念を共有化させる戦略と考えられるのではないでしょうか。
だって、「たくさんの人に読んでもらう」ことなくして、概念の一般化はありえないですから。
本質的に、教育者としてのセルフイメージが強い人なのかもしれませんね。実際、小室さんを師と仰ぐ人は、社会学者の宮台真司さんや橋爪大三郎さんなど優秀な学者が多いですもんね。
このイスラム原論は、オーソドックスなマックス=ウェーバーの社会科学の業績の簡易説明版に感じます。
キリスト教に比べると、イスラム教は極めて安定的な宗教です、というのは私は納得しました。
もちろん抽象化されたモデルですから、それで全ての現実に適用できるとはいいません。けれど、これほど安定的な宗教を信じる人々を、911のようなテロに追い込んだ国際政治システム・グローバル資本主義が、
無批判に絶対的に正しい、とはさすがにいえないような気がします。
アフガニスタンの仏像の破壊も、たしかに国際政治的には無知ではあるけれども、コーランの原点を考えれば、きわめて納得できる行為です。こういう宗教を信じる人の根源的なモチヴェーションを理解しなけば、コミュニケーションなどできるものではないでしょうね。
・「知識は最高の名誉である」
小室直樹はソビエト連邦の崩壊を、その崩壊10年前に予言した天才である。これまでも政治・経済・歴史・宗教に関わる書を世に送り出しているが、彼のメッセージに一貫しているのは、「日本人よ、しっかりせい!」ということである。小室直樹は鮮やかな包丁さばきで、「田中角栄」をはじめ、「民主主義」、「第二次大戦の敗因」、「数学」などなど、あらゆる材料を誰もが味わえる料理に仕上げていきます。
小室キッチンにて料理した本著もイスラム教のエッセンスを余すところなく、ちりばめた良書である。昨年の9月11日同時テロ以降、雨後の筍のごとく、イスラムに関する書籍は出版されました。なかには、著者のイスラムへの思い入れが強く、感情的な内容が見受けられる書もあります。イスラム教は強制的な信仰を薦めないということになっていますが、「まずはこれをお読みなさい。」と私は推したい。他のイスラム教入門書と銘打ってある700円ほどの新書を読んでも、イスラムの表層をなぞっただけで、イスラムの要諦とエッセンスを理解したことにはなりません。アメリカとイスラム社会の対立をなくすユニークなアイデアも本書にはあります。(実現するかどうかは保証できませんが)読んでのお楽しみです。では小室ワールドを心ゆくまで堪能下さい。
・「他宗教との比較から見えてくる世界」
小室氏の論理展開は非常に明快で分かりやすく、なかなか現在の日本の学校教育の中では学ぶことのできない(少し皮肉のつもりです)社会科学的な手法を駆使して私たちに語りかけてきます。ですから社会科学に対する理解なしに読むと小室氏の論理展開は強引に聞こえるだけになってしまします。
例えば、数学では数字から文字へ抽象化しても元の数字と抽象化された文字との間には必要十分条件が成り立ちますが{例 5(2+3)=10+15とa(b+c)=ab+ac}、社会科学などの場合の抽象化という作業では必要条件は成り立っても十分条件を満たさないことになります{例 「太郎は花子が好きです」と「男性は女性が好きです」など。この場合男性同士、女性同士での愛情は反例として内包されてしまう}。このように社会科学での抽象化作業の不完全性から理念(マックス・ヴェーバーの言うイディアール・ティプス)は常に現実での現象と比較検討される必要があるのです。そこが私たち素人にはなかなか理解が難しいところです。
小室氏の論理展開に強引さを感じる人は抽象化された理念と現実との現象に違和感を感じるのであって、それは小室氏の責任というよりは社会科学が常に抱える不完全さによるものではないでしょうか。そこを理解して控えめに論じる人が多い中、逆に堂々と論理を展開する小室氏には好感を覚えました。
イスラム教徒の中にも様々な人がいますが、それを抽象化して一つのイスラム観を提示する好著だと私は思います。
・「イスラムを分からせる本」
この本の書評は星1つと5つに2分するが、私は中庸をとって3つとした。読んで不快なのは、宗教に関して無知蒙昧な日本人を教化するという使命感を隠す偽善を著者が採らなかったこと。また日本人のイスラムへの無知といわれなき軽蔑を正す目的で、対極としての欧米とキリスト教への誹謗が度を過ごしている点である。
対してこの本の美点は、著者の深い知識教養に基づく世俗的な比較宗教論が、確かにイスラム教に対して無知蒙昧な多くの読者にその本質を強烈に伝えていることだ。欧米とイスラム国家の対立が世界を揺るがしている今日、馬鹿扱いされることを我慢すれば大いに勉強になる本だ。
・「日本人の空白を埋める、劇的イスラム解説書」
日本人にとって圧倒的に情報の少ないイスラムの世界を、劇的に説明している。「劇的」にとは学術書的説明ではなく、分かり易さを優先してと言う意味で。小気味よく小室節で、馴染みのない世界をバッサリ一刀両断にしてくれる(小室氏の文体は嫌う人もいるとは思うが)。
多少誇張が過ぎるとは思っても、分かり易いし、何と言っても 「腑に落ちる」 ところが小室氏の魅力だ
今米国とイラクが戦争をしているこの時期に、情緒的反応だけではなく、素直にイスラムの世界観を学んで思索を深めたいものだ。キリスト教に比べて圧倒的に情報が少ないのでから。
戦争とは全く別の観点からもイスラムの世界は興味を引く。日本人の感覚では戒律の厳しさばかりが印象に残ってしまうが、イスラム教人口は爆発的!に増えているのである。その理由を本書に求めてみるのも面白い。
・「知ることに伴う義務?」
『書物の運命』や『アラブ政治の今を読む』などで、単に知らない地域の事情を知らせてくれるだけではなく論壇・マスコミにおける定型的な思考停止を指摘していた気鋭のアラブ思想研究者(と自認しているみたいだけど、むしろ地域研究側な感じ)による時評と評論集。
本書の衝撃は、とっても厳しいものがあります。
いろんな話題が満載ですが、それに惑わされちゃ駄目なように思っています。論壇・マスコミにおける定型的な思考停止の指摘あり、痛烈な皮肉あり、西欧のイスラム系移民の統合や多文化主義への反省などから、所謂ポストコロニアル(嫌)な国民国家論や民族関係論や近代化論などを射程にした考察あり、イスラムの理念と、私たちにとってのその理解し難さがいかに認識しにくいものであるかの指摘あり、人文・社会系のいろんな議論にとって、エキサイティングな指摘だらけ。
だけじゃなく、ブッシュ政権のイラク侵攻以来の中東情勢の整理あり、欧米の中東政策の是非やイスラエル内政の構造変化の指摘や、自衛隊のプレゼンス戦略への指摘など、あるところでは理念的に、また一方では、すでに狭められた選択肢を踏まえて現実的に、私たちの態度が、“気持ちよく馬鹿にしてスッキリして終わり”というものに流れていたのではないかと思わされるような、真剣な分析を提示しています。デンマークの新聞の例の風刺画事件も、何度も取り上げられています。
しかし、それら豊富な内容にうっかり惑わされちゃ駄目かと。冒頭の、日本語で論じるということがどんな意味を持つのだろうか、という問いかけにこそ注目。この問いかけは、じつに厳しいものがあります。“襟を正す”なんてもんじゃありません。職業研究者ではなくとも、いろんな立場で世界と接する場面は増えている昨今(この場合の世界は、いわゆる国際的な意味での世界に限定されません)。異文化理解だの国際化だのが、ともすればお題目に堕しかねない、痛烈で厳しい問いかけです。
●実は見かけない、アラブの大富豪 (ヴィレッジブックス新書)
・「もっと中東を知ろう、見てみよう。」
最近、マスメディアで中東のドバイなどがオイルマネーの大富豪といった話題で取り上げられるようになってきました。本書はそういったドバイをメインに庶民の暮らしぶりや習慣からビジネスに至る中東事情についてざっくばらんに説明しています。なかでも日本人はいまだに”ハラキリ”をする民族であるとの認識があるとのことです。また、接待を受け、”スシ”と言えば、マグロがまるごと一匹が出てきたことがあったとのこと。中国や韓国といった諸外国は、早々と中東路線を繰り広げており、航路の確保、両国で認知度が高まるようマスメディアも活性化しているようです。しかしながら、日本はビジネス上の中東路線を含め後発となっており、マスメディアからの中東情報はアメリカというフィルターを通した形でしか伝わってこないのが実情らしいです。そのため、日本から見た中東はアラビアンナイトの世界であり、政情や治安不安定というイメージが強く、また中東から見た日本もおかしな民族といった認識を持たれているという次第です。今後は両国の認知度が高まるよう、こういった本が数多く出版されることを期待します。
・「アラブ商人の現実」
13年にわたりドバイを中心にUAE(アラブ首長国連邦)で仕事をしている著者による、アラブ現地事情。題名からアラブの大富豪の紹介本かと思って買いましたが、どちらかというとアラブビジネスについての本です。同じアジアに属しながら、中東となると、オイルマネー、イスラム教、大富豪と、紋切り型で見ていたな、と本書を読み終わって思いました。
アラブ=大富豪というイメージがあるのに、実は世界長者にランクインしている大富豪はあまりいない。それはなぜか、という話から、アラブ式ビジネスマナー(ええーー!と思うような話あり)や、笑える勘違い満載のアラブ人の日本観など、著者の実体験に基づくエピソードが面白いです。そして、インターネットの普及により急速に変わりつつあるアラブに対し、いつまでもアメリカというフィルターを通してしかアラブを見ようとしない日本が、中国、韓国、台湾などに抜かれつつある現状に警告を鳴らしています。
ドバイで仕事をしようとしている人でなくても、面白く読めると思います。
・「著者が綴る日本語のしなやかな美しさに酔うことが出来た珠玉のエッセイ集」
日本人の母とエジプト人の父を持つ著者は、NHKラジオ日本でアラビア語アナウンサーを務める人物。本書は、広くアラブ世界に受け継がれた豊穣な文化と伝統について、流麗かつ品位あふれる日本語で紡がれた、実に見事なエッセイ集です。
アラブの世界には人々の心を打つ豊かな詩の文化があり、時にその詩を巡って部族間で激しいつばぜり合いが繰り広げられたというエピソードが綴られています。歌の腕前を競い合った平安貴族の世にも通じる物語として、大変興味深く読みました。
「マイ・フェア・レディ」のピアス夫人が、ヒギンズ家を訪ねてきたフレディ青年に、家の主が食事中なので広間で待つように告げる場面を取り上げ、「たとえ食事中でも家の主が出てきて、『どうぞご一緒に』という」のがアラブ人のホスピタリティであると著者は書きます。 また、スカーフ着用がイスラーム的であることのシンボルだという世間一般の思い込みに対して、「つい一昔前まで、ヨーロッパの農村の女性はスカーフや帽子で髪を隠して教会に行ったのではないか?」と指摘します。 そう、私たちは文化の相対性というものに常に謙虚に目を向ける必要があります。この態度こそが他者との間に建設的な何かを生むということを、著者は声高にではなく、深く心にしみる言葉で綴ってみせるのです。
それにしても、本書の行間から立ち上ってくるのは、理知あふれる文学者だった亡父に対する、娘である著者の深い思慕の念です。 わけても、高校生の頃の著者が父の故郷で過ごしたひと夏の出来事を綴った「センディヨーンの夏」はそのことを強く感じさせます。若き日に父が友人を幸せにするためにと泣く泣く売り払った羊が、数十年の時を越えて次世代のまた別の友人にほんのいっとき人生の幸福をもたらす。父のやさしさを懐かしむ著者が記す最後の一行に、私は思わず涙してしまったほどです。
エッセイを読む喜びを与えてくれる好著です。
・「惚れました。。。」
NHKのアラビア語講座に出演されていて、その美しい容姿・アラビア語の発音・かわいい笑顔に一目ぼれしました。はい。
で、本書でますます惚れました。おもしろいです。この本。まず、『アラブ人のこだわり』に、声を出して笑えます。『恋するアラブ人』では、アラブの歴史上の人物たちが生き生きと紹介されています。まるでおとぎ話を聞かさせるようなわかりやすくて、楽しくて、とっつきにくかったアラブの歴史に興味がもてました。
本書は彼女の教養、聡明さ、日本語のうまさ、こだわり、エジプト、日本、家族に対する思い、おちゃめな人柄も感じられ、好感が持てました。アラブに興味がある方はもちろん、アラブに興味がなくても、エッセイとしてもすばらしい。一読の価値アリ。オススメです。
・「イスラームがよくわかる!」
初めて手にするイスラームの本として最適です。写真や絵が多く全ページカラーなので見ているだけでも面白いです。特に、イスラーム諸国のデータが詳しく載っていて、それぞれの国の現状を把握しやすい内容でした。この内容にこの値段はお得だと思います。
・「本当にこの値段でこの内容?!とびっくり」
原書が2003年刊行で割合と新しいのが、諸事情が変わりやすいこのエリアでは良いことだ。大判で写真、図版に地図や年表が満載。プラス、イスラーム諸国40カ国以上の各国詳細データつき(こういう本はありそうでなかったから貴重)。とにかく過去から現代までのイスラーム関連の事象がわかりやすく概観できるようになっていて、コンパクトなイスラム事典の体裁だ。そしてさらに驚きはこの値段!!ムック本の体裁ですらないのに、何故こんな値段にできたのだろう?翻訳も読みやすい。一冊手元において損はない本だ。お勧めです。
・「索引が無いのがいかにも残念」
いかにも広瀬隆らしい作品であり、誰にも真似の出来ないものであると言えよう。系図を駆使するこの手法は、彼の主著である『赤い盾』から綿々と受け継がれているものである。果たして「血の濃さ」がそれほどまでに重要なものであるのか?に関しては、私自身は、現代に至るまでまだ自分は判断がつかないところであるが、例えば本書300-301頁の系図に見られる現大統領G.ブッシュと、「2000年の大統領選当確判定責任者」John Ellisの関係などは衝撃的であると言えよう。
いずれにせよ、広瀬は彼自身の分析法を編み出したわけであり、その信じられないほど複雑かつ膨大な系図や、それを用いて叩きつける様に語る分析を読んでいると感嘆せざるを得ない。実際、このような物を次々と書き続ける彼のバイタリティーを見る時、自分自身の不勉強さを恥じるばかりである。
誰かが読み難いと書いていたが、確かにその点に関しては私も感じることがままあり、あまりにも縦横無尽に話が展開されるため、一体誰が誰なのか混乱することもある。一つには慣れの問題であろうが、本作の場合、いつもであれば巻末に付けられるはずの索引が今回は無いのが実に残念である。
また、広瀬の著作を読んでいて常々感じることであるが、参考文献リストを付けてもらいたいと切に願う次第である。彼の場合、絶版、未翻訳の資料などを活用することが多いであろうことは想像に難くないが、しかし、参考文献リストが無ければ読者が彼の作品からより知識を深めていくことが困難に成ると思うのである。
また、出来ることならば『赤い盾』でも予告していることであるから、早い時期に朝鮮半島の分析を書いてもらいたいと切に願う次第である。
・「一方的な言い分」
広瀬隆の本はどれもみな似たようなもので、事実を客観的に捉えて伝えるものではなく、最初に思い入れや思い込みがあり、どうにかして自分の主張を押し通そうとしているのが顕著に見られます。本書にもまず最初に、「オサマビンラディンは立派な建築家であり、過去にテロなど行ったことはなく、全てアメリカの言いがかりである」、「アフガン空爆は米英が利権を確保するための侵略戦争」、「炭素菌事件の犯人を何とかしてイスラム教徒であるとでっち上げようとしたが、それに失敗したため、FBIは真犯人を知りながら逮捕しなかった」等と言った勝手な思い込みがあり、さらには過去のパレスチナやサウジアラビアに関する欧米の姿勢を述べることで、欧米こそが「悪」で、それに抵抗するイスラム教徒は「正義」であるといった主張をどうにかして押し通そうとしている様子が窺えます。
そのために、所々イスラムに対する一方的な思い入れとしか言いようがない記述が目立ち(利子のない金融システムやイランの白色革命に関する記述など。実際にはサウジの金融システムには、事業に失敗すれば三社とも持金が0になるなどの問題が多々あるわけですし、白色革命は農地改革や識字率の向上による政治改革を目指したもので、恐怖政治と何ら関係はありません)、彼独自の手法である人脈の系図などというのも、読み手をわざと混乱させているとしか思えません。また、常軌を逸しているとしか思えないテロリストと、穏健なイスラム教徒を区別せず、あたかもイスラム教徒が皆が皆テロ(広瀬流にいえばゲリラ)を支持しているような書き方も主張を通すためのプロパガンダと思われます。この手のプロパガンダをフルに活用してたどり着くのは、「イスラム教徒を長年に渡って苦しめてきたのはロスチャイルドであり、この一族に私物化された欧米諸国である。9.11の事件で彼らに報復する資格などなく、謝罪せねばならないのは彼らのほうなのだ。」やれやれ。この理屈は「日本は我々を植民地支配で苦しめたのだから、我々は日本に対して何をやってもいい。日本はひたすら謝罪せよ」という北朝鮮の屁理屈と同じで、塔底受け入れられるものではありません。あまりの暴論です。ジャーナリストでも専門家でもない、一介の作家にしては頑張ってよく書いたとは思いますが、平均的な中東書籍からはあまりに逸脱した記述が多いため、うかつに信用しない方がいいと思います。
・「本書を読まずして中東問題を語るなかれ」
一般の歴史書がすべて真実を記している事はない、あくまで歴史である、学校の教科書が正しい歴史観を全部伝えているとはいえない、中東問題をまるで対岸の火事、どこか遥か遠くの異国の地で起きている宗教観の対立、石油利権の対立問題という極めて皮相的な、表層的な歴史の捉え方では真実は見えてこないし知り得ない、確かに古代時代からの連綿と連なる日本の歴史も必要だが、今必要のは我々が生きている現代史の深遠を紐解く真の歴史書である、その意味で洞察力を磨くためにも本著は一読の名著である
・「読みにくいが値段は安い!!」
この本を読むと、莫大な原油埋蔵量を誇るサウジアラビア周辺への関心がグッと高まるのは間違いありません。NHK出版ということもあり、懐疑の心を保ちながらも、おおむね真に受け止めていいのかもしれないと思っています。
この本を読んで改めて分かるのは、中近東の石油のパワーゲームで目立つのは英米・アングロサクソン系の石油企業ばかりで、日系企業にほとんど存在感が無いということで、これは気がかりです。着々と進められているアメリカのイラク攻撃計画ですが、日本人の無知に、再度湾岸戦争のときのように、世界から無能呼ばわれされそうな気がしてきました。
・「広瀬隆氏のライフワーク」
資源獲得のための最終手段を戦争とすると、本書はまさにその因果関係を的確かつ詳細に捉えた秀逸なものである。拙著『ロマノフ家の黄金』、『赤い楯』から連綿と続く著者のライフワークである世界一大派閥(一家)の世界戦略が垣間みることが出来て、大変興味深いものになっている。世界史の裏側を知りたい人にぜひお勧めの一作である。
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